インプラントは素晴らしい治療方法ではありますが、100%安全ではありません。リスクもあります。それはインプラントに限らず、従来の歯科治療にもリスクが伴います。
しかし、インプラントをする上で、そのリスクも正しく理解しておくことはとても大切なことです。
以下のリスクが生じる可能性はとても低いですが、リスクとして存在していることは確かです。
(1)全身疾患の持病がある方 ・糖尿病
・心臓疾患、不整脈などがあり、麻酔薬を使用することが出来ない場合はインプラント手術をすることはできません。主治医にご相談下さい。
・狭心症
・心筋梗塞
・高血圧症
・骨粗しょう症
・骨粗しょう症のお薬でビスホスホネート系製剤を投与されている方は注意が必要ですのでお申し出下さい。
(2)咬み合わせに問題のある方 咬み合わせがズレていたり、歯ぎしりや喰いしばりが強い方は、インプラントがダメになってしまう危険性がとても高いのです。
なぜなら、インプラントには歯根膜というクッションがありませんので、歯ぎしりや喰いしばりの力がもろに歯槽骨に伝わってしまい、インプラントと歯槽骨との結合を外してしまうリスクが高いからです。
実際、インプラントが失敗するケースのかなり割合が歯ぎしりと喰いしばりの強い方なのです。
インプラント治療の前にかみ合わせの改善を行ったり、歯ぎしりのある方は就寝時にナイトガードの装着が必要になります。
(3)インプラントを入れる部分の骨の質や量に問題のある方 骨粗しょう症の方は骨の密度が低いために、インプラントと骨との結合が上手く行かないリスクがありますので、大丈夫かどうかの事前の検査が必要です。
また、インプラントを入れる周辺の骨の量が少ないとインプラントが失敗してしまうリスクが高いため、骨を再生させる治療が必要になります。
(4)歯周病のある方 歯周病は、歯を支えている歯槽骨が破壊されていく病気です。インプラントはその歯槽骨に入れることになりますので、重度の歯周病の状態でインプラントを入れることはインプラントが失敗するリスクをかなり高めることになります。
歯周病の治療を行い、歯周病が改善されればインプラントが可能になります。また、インプラントをするまでに患者様のブラッシングの状態が良くなっていないとインプラントをした後にインプラント周囲炎になってしまい、インプラントが失敗するリスクが高くなるので患者様のブラッシングも改善することはとても重要です。
(5)妊娠中の方
妊娠中の方や妊娠のご予定のある方は、レントゲン撮影や麻酔をすることができませんので、インプラント治療ができません。しかし、出産後はインプラント治療を受けることは可能です。 (1)下顎の骨にインプラントを埋める時、ドリルによる下顎管損傷
下顎管は細いトンネルなので、下顎骨が折れたり、抜歯の際に歯根部に圧迫されたり、インプラントの手術の際にドリルで圧迫されたりすると、下歯槽神経と下歯槽動脈・静脈は直ぐに損傷し易いのです。
下歯槽神経が損傷してしまうと、唇などの麻痺が起こる場合があります。したがって、解剖学的な知識、下歯槽神経を傷つけない正確な診断がとても重要になります。
もし麻痺が起こったとしても、下歯槽神経は知覚神経なので顔の形が変わってしまったり、運動障害を引き起こす事はありません。ただし、神経なので治るのに時間が掛かってしまいます。
3週間から数ヶ月かかるケースもあります。治療としては副腎皮質ホルモンの静脈内投与が有効ですが、一般的にはビタミン剤の投与がなされます。
(2)下顎の骨にインプラントを埋める時に、ドリルによる舌下動脈、下歯槽動脈の損傷
下歯槽動脈は、前述の下歯槽神経のそばに存在するので、損傷してしまう可能性は低いです。もし損傷してしまったとしても、圧迫することで血を止めることができます。
舌下動脈の損傷は、インプラントを埋めるためにドリルで穴を空けている際に、ドリルの方向が舌よりになってしまい、下顎骨を貫通して損傷する事があります。希なケースですが、有効な血を止める方法がなく、経過を観察する事になる場合もあります。
どちらのケースも内出血し、手術翌日から3週間程度皮下出血斑が生じる事がありますが、完全に消失します。 (3)上顎の骨へインプラントを埋める時、ドリルによる鼻腔および上顎洞への穿孔 インプラントを埋める穴をドリルで開ける際、鼻腔底および上顎洞に穴を開けてしまう可能性がまれにあります。 その場合には、その場所にインプラントを埋めることを中止し、他に埋めることが可能な場所にインプラントの穴を空けることになります。
もし、穴を開けてしまった場合には、手術が終わった後に抗生剤を服用する事で感染予防をします。 (1)腫れや内出血、まれに痛み、しびれ等が起こる事があります 腫れや内出血、まれに痛み、しびれ等は、時間が経つにつれて改善していきます。インプラントを埋めてから3週間は安静にし、インプラントと骨が結合するのを2〜6ヶ月待ちます。
ただし、骨の質が悪かったり、大きすぎる力がインプラントに加わる事でインプラントが外れてしまうことが希にあります。また、一定期間、インプラントと骨が結合するのを待ったにもかかわらず、骨結合していない場合も希にあります。その時は、もう少し期間を延長します。 (2)インプラントと骨が結合し、かぶせ物が装着されからの問題 @インプラントを埋める本数が少なく、インプラントにかかる力が大きくなりすぎてインプラントがグラグラし出してしまう
まず、手術前に歯科医師とよく相談しインプラントを埋める本数を決めれば、まず問題は起こりません。しかし、骨の量が少く十分な長さのインプラントを埋めることが出来なかったり、骨の質が悪い場合は、同様の問題が起こる可能性があります。
Aインプラントが歯周病になってしまうことで、腫れたり膿が出たり、インプラントがグラグラし始めてしまう
まずインプラントの治療を受ける上で、クリアーしなければいけない問題が『歯ブラシが出来る事』です。
インプラントは骨にしっかりと結合しますが、歯ぐきとの結合は自分の歯よりも弱いのです。
従って、少しでも食べカスがインプラントの周りに残っていると炎症を起こし、さらに進むと腫れたり出血したりします。最悪の場合、インプラントがグラグラし始めてしまいます。
インプラントがグラグラしてしまえば、インプラントが外れてしまうことにつながります。ブラッシングがきちんと出来れば、何の問題もなく長くインプラントは機能します。 インプラントが機能し始めて自分の歯と同じように咬めるようになってからも、決して油断はできないのです。
Bブラキシズム(歯ぎしり)
総入れ歯の場合は入れ歯の時はなくてもインプラントが入って、しっかり咬めるようになると再び歯ぎしりが始まります。就眠時は、義歯の場合は外すかブリッジの場合はやはりナイトガードが必要となります。 |